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「絶対音感」 最相 葉月

「絶対音感」 最相 葉月

新書版が発売された当時は、ブームになった本。
いつのまにか文庫になっていたのを見つけたので読んで見ました。

絶対音感とは何か、ということを求めて取材した結果のノンフィクションです。
絶対音感を持っている人への取材を通して、持っている人の世界にちかづいていきます。

絶対音感の利点、つけ方、陰の面などに取材で迫って行きます。
普段は見えにくい音楽の世界が見えてきます。

絶対音感に関してはもちろん興味深い内容だったのですが、
個人的には、音楽の常識的(と思われる)内容が説明されていることが
自分の音楽の知らなさに光を当ててくれたようで、良かったです。

知らない世界を開くということで、結構面白い一冊です。

「カンバセイション・ピース」保坂 和志

「カンバセイション・ピース」保坂 和志

保坂和志の本なので、文庫になってすぐ買いに行ったのだけれど、
読み終えるまでは、かなり時間がかかってしまった。

「プレーンソング」に、もっと考えることを付加したような小説であり、
じっくりじっくり読んでいたからである。

自分としては前と同様、事件は何もおきないけれど
みんながそれぞれ、暮らしていて考えて日常が過ぎていく。
「プレーンソング」や「季節の記憶」と同様かなと感じました。

が、解説によると、
「プレーンソング」→「季節の記憶」→「カンバセーション・ピース」と
どんどんすごくなっているとのことです。気がつかないので、読み込みが足りないようです。

それと、解説からもう一点気がついたことが。
今まで、保坂 和志の小説は、何もおきないけれど、なんとなく好き。
という認識で、何が好きなのかがわからなかったのですが、
解説にそのことについて答えがありました。
それは、何かを「どのように」書いてあるかということであり、
小説で描写されている「場」、自体のことだということです。

たしかに、映画のような雰囲気を感じてました。

わからないながらも、満足!

「廃墟ホテル」 デイヴィッド・マレル

「廃墟ホテル」 デイヴィッド・マレル 著

都市探検者と呼ばれる、廃墟を探索する人々の恐怖の一夜。
教授一行と、取材の新聞記者がかつての豪華ホテルを探検します。

序盤は探検気分。ちょっと薀蓄があったり、過去への思いをはせるような部分があったり。
先に何が待っているのかという期待も含めて、なかなかわくわくします。

中盤からは、雰囲気が変わって、ホラーとアクションに比重が移されます。
これはこれでいいのですが、場面転換が激しく、舞台が大きいホテルであるにもかかわらず
見取り図は提示されないため、ちょっとわかりにくかったかなと思いました。

全部終わった際の感想としては、映画のようだったかなと思います。
普通な結末であったことも含めて。

意外によかったのは、作者による解説です。
都市探検についての、例や作者の思いが詰まっていて、
短いですが、面白かったです。廃墟探検したら、
こんな気分なのかな?というのを伝えてくれました。

訳書ですが、大体において読みやすいです。
登場人物のやり取りは、海外作品なのだなと思わされます。

「翼のある子供たち」 ジェイムズ・パターソン

「翼のある子供たち」 ジェイムズ・パターソン 著

アメリカのサスペンス。
タイトルどおり、人間に鳥が混ざった、羽のある子供が出てくるお話。
解説ではメルヘンといっているが、アメリカのアクション映画的な内容でした。

人体実験がテーマの割には、そこの葛藤なんかが書かれていないし。
翼がある設定も、あんまり生かされていないし。
でもなにより、その人体実験してる組織に関して
詳しくわからないので、主人公たちが巻き込まれてどたばたして終わり。
という印象を受けてしまいました。
あと、ラストは車と銃がものを言うあたりもアメリカ的かも。
どんぱちやったり、空飛ぶシーンを再現したりすれば、
たぶん、それなりのアクション映画にはなるんだろうなと思う。
それを、文字で読んでもいまいちだけど。

あんまり、面白くなかった。

「順列都市」 グレッグ・イーガン

「順列都市」(上下巻) グレッグ・イーガン 著

情報科学と、ネットワークが今より発達している時代、
人間をスキャンして、仮想環境で走らせるコピーと呼ばれる
技術がある時代。

始まりは、自分のコピーを作って実験を行っているポール(コピー)の視点から始まります。
ほかに、お金がなくて十分な実行時間が買えないコピーのピーや、
大富豪のコピー、それにコピーとは別の仮想環境「オートヴァース」にはまっている
ソフトウェアデザイナー。それぞれの視点からばらばらに話が進んで行きます。

上巻のほとんどはmそれぞれの求めるものと、同じ世界に集まるまで、
下巻はコピーにとっての新世界と、その崩壊まで。

読んでいて面白い、のですが専門用語?がわかりにくいことがあります。
そして、お話の肝であるのでかけませんが、新世界のキーになるあるアイデアの
理解が難しい。訳は悪くないのですが、著されていることが抽象的なので
その辺がちょっとです。

内容的には面白いです。ライフゲームとかシムシティとかやりたくなる。

「陽気なギャングが地球を回す」伊坂幸太郎

「陽気なギャングが地球を回す」伊坂幸太郎

ちょっと特殊な能力(嘘を見破る、時間を正確に刻めるなど)を持っている主人公たち4人組が、
いつもどおり、銀行強盗をするものの、邪魔が入りトラブルに巻き込まれます。
ストーリは、ややスリリングな感じでかつテンポ良く進んでいきます。
登場人物たちの掛け合いもなかなか面白く、楽しく読めました。

登場人物の能力が、ちょっと個性が強すぎるぐらいに強力なのと、
ストーリを知ってしまった2回目以降も同じように読めるかな?
という心配がありますが、結構楽しい本でした。ほかの著書も探してみよう。

「詩歌の待ち伏せ1」北村薫

「詩歌の待ち伏せ1」北村薫

北村薫の本ということで、買ってしまいました。
タイトルのように、詩の本です。著者が出会った詩と、
それに関するエピソードや、解釈が短く書かれています。

ちょっと、詩はわからないなぁと思っていましたが、
そんなことなく、じっくり読めました。なんだか、知識が深くなった気にもなれます。

それはそうと、この中には北村氏の悪意に関する態度、考え方が現れている部分があります。
小さく潜んでいる悪意に気がつくこと、そういうものに対する強い嫌悪感。
みんなが、こういう心に気がつけば、もっと気持ちがいい世界になるんだろうな。
と感じます。

「たったひとつの冴えたやりかた」J・ティプトリー・ジュニア

「たったひとつの冴えたやりかた」J・ティプトリー・ジュニア

とりあえず、タイトルにひきつけられます。
原題は、THE STARRY RIFT のようなので、
このタイトルは、訳者がつけたのでしょうか?
#中篇の原題が The Only Neat Thing To Do なので
#そこからとったみたいですね。

この「やりかた」ってのが、何なのかというのは中を読んでのお楽しみです。

人間が宇宙へ進出して、異文化ともかなり交流している時代。
宇宙を舞台にした、3篇の中篇が収められてますが、この中篇自体が、小説内小説という形になる
構成になっていて、小説の中の世界観をリアルに感じることができます。
この、小説自体の構成もそうですが、
主人公の1人称から、主人公の記録を聞いている形への場面転換のうまさなど、
読者の視点と気持ちの誘導がうまいなと思います。

訳文がとても読みやすいので、海外作品でもスムーズに読むことができました。
内容も面白く、かなり、おすすめ。

「星々の舟」 村山 由佳

「星々の舟」 村山 由佳 著

それぞれが問題を抱えている家族の物語。
章ごとに、視点が変わりそれぞれの問題がかかれます。
また、連作の形式になっていて別の人物から見た視点で、別の章の主人公が登場します。
それぞれが、不倫だったり、近親愛だったり、戦争体験だったりと引きずっていますが
それでも、家族という舟に乗っている、といったタイトルだったと思います。

話の中では、問題を抱えつつも解決し、何とかやっていくという形になっていますが、
実際には、こんな風に静かに収まらないだろうし、そもそも問題を抱えすぎかなという
気もしました。

ただ、読み物としては一気に読んでしまう面白さがあると思います。
リアルなような、ファンタジー。

GOTH 夜の章、僕の章 乙一

GOTH 夜の章、僕の章 乙一 著

本当は2冊なんだけど、一緒に読み終わったので。

ちょっと推理ものっぽいような、ダークヒーロがやりたいことにだけ活躍する話です。
表向きは普通だけど、猟奇殺人(の犯人とか)なんかが大好きな僕が、
生き埋め大好きなどのちょっと変な相手と、やりあう、けど解決はしない。

ダークな感じが、刺激強くてどんどこ読んでいきました。
ただ、読者のミスリードを誘うようなのは、あんまり好きじゃないな。
それと、ちょっとグロが多い気も。